「多様性」の国アメリカから、
不条理な差別のあり方や
それへの対抗の歴史、
マイノリティの文化の
豊かさや強さを学ぶ
外国語学部
国際関係学科
北 美幸 教授
研究の魅力
いわゆる公民権運動は、1963年のワシントン大行進でのM?L?キング牧師の「私には夢がある」演説が有名です。しかし、キングの演説を聞いて感動した人たちが自発的に差別をやめたのではなく、女性や白人、また著名で雄弁な活動家でない多数の「普通の人たち」の献身があってこそ、公民権法?投票権法が成立し、差別の減退にもつながりました。
アメリカには白人に対する差別もあり、ユダヤ人は反ユダヤ主義を克服しようとする中で黒人をはじめとした他のマイノリティと連帯し、積極的に公民権運動にも参加しました。こういった複雑性がアメリカ史研究の面白さだと思います。以前は文書館での史料調査を主要な研究方法としていましたが、最近では元公民権活動家の人たちへの聞き取りなどもおこなっています。
研究の源
学部生のときは英語学を専攻していたので、卒業論文でethnic slur(エスニック?マイノリティに対する中傷語)について調べました。その際、アメリカにも総人口の約3%のユダヤ人がいて反ユダヤ主義があること、それが法律などの形では規定されていない目に見えない差別であることを知り、アメリカ?ユダヤ人に興味を持ちました。
研究の未来
2011年6月のニューヨーク州の同性結婚合法化と、その数日後に行われたニューヨーク市のLGBTプライド?パレードに偶然居合わせたことが研究上の画期となりました。50万人の人出と街中にはためくレインボー?フラッグ、通過するだけで3時間かかる5番街でのパレードの熱気に圧倒され、アメリカの多様性の究極の姿を突き付けられた思いがしました。今ではハーヴェイ?ミルク(同性愛者であることを公言して1978年に初めて政治家になったユダヤ系の人物)などについても授業で扱っています。
ゼミのイチオシ
ゼミでは、移民やエスニシティの問題を中心に、社会史、移民史、人種関係論を史的?総合的に学んでいます。そのほか、性的マイノリティの人々(LGBTQ+)をめぐる状況にも着目しています。その際、「遠い外国であるアメリカ」について学ぶだけにならないよう日本に目を向けるようにし、日本での同性婚の実現を目指す「結婚の自由をすべての人に」公判の傍聴や九州レインボープライドへの参加、吉塚リトルアジアマーケットの見学などに行っています。
- 先生のイチオシ
「アメリカの社会」「アメリカ史の争点」などの授業で、アメリカ人と同性婚(国際結婚)をされている方をお招きして特別講義「アメリカの同性婚事情」を開催しています。また、図書館3階に性の多様性に関する図書コーナー「なないろのほんだな」を設置していますので、ぜひご利用下さい。
- オフショット
大学生のときから、途中、中断しながらもテニスを続けています。今では大切なストレス発散の手段です! アメリカ?ユダヤ人関係の文書館はニューヨークに集中しているので、コロナ前は資料収集の際にUSオープンのナイターの試合をよく見に行っていました。
北教授
プロフィール
福岡出身で、大学進学で上京しました。東京に住み始め、テニスサークルの先輩が在日韓国人だったことから、在日コリアンをはじめとして部落差別など日本国内の差別問題に関心を持つようになりました。 専攻が英語学だったので、英語圏であるアメリカに関連した研究をしたいと思い、大学院に入ってからはアメリカの「見えない差別」であるユダヤ人問題をはじめとした人種関係を研究しています。 旅行が好きで、写真はフロリダのエバーグレーズ国立公園のワニです。