小説や詩ではない
「文学」的言説や絵画表現と
向き合うことも
文学研究の魅力の一つ。
文学部
比較文化学科
生住 昌大 准教授
研究の魅力
私の専門は日本近代文学ですが、小説や詩、作家の研究だけが、文学研究ではありません。現在は、文学的観点から、西南戦争報道の研究にも取り組んでいます。「報道」と「文学」は正反対のようですが、明治10年の西南戦争は、新聞記事を小説風に仕立てた実録物や、戦場の様子を想像で描いた錦絵によっても伝えられました。ただ、これらの資料は、フィクションを多く含むため、歴史やメディア研究では蔑ろにされてきました。ですが、当時の人々は、虚実入りまじる実録物や錦絵も手に取って、西南戦争を理解したのです。
小説や詩ではない、こうした「文学」的言説や絵画表現と向き合うことも、文学研究者の仕事であり、文学研究の魅力の一つです。
研究の源
"新しい何か"がなければ、「研究」として成り立ちません。研究するということは、"世界初の目撃者"になるということ。従来見向きもされなかった資料を用いて進める私の研究は、まだ誰も踏み入れたことのない世界です。日々のささやかな発見と小さな興奮。これが私の研究の源です。
研究の未来
私が特に関心を向ける明治10年前後の日本は、もはや「近世」ではなく、「近代」とも言いがたい、端境期にあたります。それゆえ文学研究の空白域となっており、多くの資料が手つかずのままとなっています。若くて勢いのある、未来の研究者の参入が期待されています。
ゼミのイチオシ
ゼミには日本近代文学好きが集まり、芥川や太宰など、担当者が好きな作品を選んで、発表と討議を行っています。小説や詩について、意見をぶつけ合う濃密な90分。これほど贅沢な時間はありません。選ぶ作品に、普段は隠されているその人の人間性がチラリと見える瞬間が、私の密かな楽しみでもあります。
- 先生のイチオシ
読書体験を個人のもので終わらせず、友人たちと共有してみましょう。自分の読みが否定され、相手の解釈に納得させられたりすることもしばしばですが、しかしその瞬間こそ、私の"生まれ変わり"のチャンスです。
- オフショット
今の若い世代の文化に挑戦してみることが、私の楽しみの一つ。写真は、映像制作が得意なゼミ生が撮影してくれた、私のイメージビデオの一コマ。休日を利用し、博鱼体育_足彩app哪个是正规的-手机版官网内で撮影を行った。
生住准教授
プロフィール
北海道に生まれ、熊本で育つ。運動が得意だったが、幼い頃から絵や歌が上手い人や、読書家である友人たちに強い憧れを抱いていた。高校まで部活動一色だったため、大学ではカラオケやゲーム、読書など、それまでできなかったことを思いっきり楽しんで大学生活を謳歌。研究の面白さを知ったのは、大学3年生のゼミ発表の時だった。2011年に佐世保工業高等専門学校講師、2016年より本学文学部准教授。専門は日本近代文学。