自分にとって身近な地域や
社会がどのように成り立って
いるのか、社会学の概念を
使って「観察」しよう。
地域創生学群
地域創生学類
西田 心平 教授
研究の魅力
「ご専門は何ですか?」を聞かれれば「臨床社会学です」と答えています。臨床社会学とは、社会の「診断」と「処方」について考える社会学の一分野です。私にとって社会学の魅力は、「自分自身が関わる事象を正面から扱える学問」であること。だから、その時、その場所で、自分にとって最も重要だと思うことを社会学の概念を使って研究しています。
今は働く人たち(労働者)の思想と運動の系譜を知りたくて、北九州で盛んだった文化運動とかつて八幡製鉄所から発行されていた職場雑誌を素材にしながら、地方都市と文化活動の関係について調べています。
研究の源
私が20代の大学院生であった頃、「働くこと」と「生活すること」の矛盾が凝縮した街で暮らす人たちを対象に研究を行っていました。それは当時の私にとって、自分自身が切実に感じていた社会の問題でもあったからでした。
今も自分自身の鏡を通して見えてくる社会の矛盾や課題について考察したいという気持ちが、自分の研究の源になっている気がします。
研究の未来
「自分自身が関わる事象」を今の20代の若者(学生たち)とも一緒に考察したいと思っています。とりわけ、今、私たちが暮らしている北九州は、産業や文化、教育や福祉、市政などの面で、地方都市として個性的であると同時に、近代において典型的な歴史を歩んできた街でもあります。
最も身近なこの街や地域について知ることから、日本(国家)ひいては世界(グローバル化)を語り合う基本的な認識方法を若い人たちと共有したいものです。
ゼミのイチオシ
「『物語』としての街を読み解く」。
これがゼミ活動の基本テーマです。街にはそれぞれの役割や機能があります。今は主に北九州の門司港地域を中心に、「海」や「道」の歴史的な系譜をたどりながら、街の魅力とこれからの役割を学生たちと一緒に考えています。「地元商店主さんや、観光客、よそ者の立場など、一つの街をさまざまな視点から見ることができるのが面白い」とは、ゼミ生が語ってくれた言葉です。
- 先生のイチオシ
多機能携帯電話(スマホなど)は情報収集には欠かせない手段ですが、時には顔を上げて自分の目で街中を観察しましょう。まずはお気に入りのカフェやランチのお店を探すような気分でいいのです。「遊ぶこと」と「学ぶこと」の間にはっきりとした境目なんてありません。周りの人や物事をしっかり観察することが、自分の振る舞いや生き方を見つめるきっかけになるかもしれません。
- オフショット
時間ができれば、自然が豊かな場所で家族とゆっくり過ごします。それが今の自分にとってのリフレッシュになっていると思います。子どもたちとこんな時間がいつまで過ごせるかな? 年をとっても誘ってもらえるようなオヤジでいなければ。
西田教授
プロフィール
広島市の出身で、大学生活は主に京都で過ごしました。受験に備えて熱心に勉強するタイプではありませんでしたが、高校時代にある先生との出会いがきっかけで、大学への進学を少しだけまじめに考えるようになりました。立命館大学では社会病理学という学問を専門とする若い先生との出会いが、その後の私の成長に影響を与えたと思います。
北九州との出会いは、北九州市立大学に地域創生学群という学部がつくられたことがきっかけ。2008年からお世話になっています。
私にとって北九州は、ものを考える上で重要なフィールドにもなっている気がします。まだ知らないことの方が多いですが、いろいろな角度からこの街を「観察」してきたいと思っています。